【バッカス・バイオイノベーション、微生物開発と生産プロセス開発によりバイオものづくりのプラットフォーマーを目指す】

バッカス・バイオイノベーション

小間番号: B-20

バイオファウンドリサービスの流れ 「DBTLサイクル」

バッカス・バイオイノベーション
バイオファウンドリのラボ写真

 

神戸大学におけるバイオテクノロジー関連の先端技術やノウハウ、人材をパッケージで技術移転し、アジア初・唯一の統合型バイオファウンドリとして2020年に設立されたバッカス・バイオイノベーション。

微生物に有用物質を作らせる「バイオものづくり」が注目される中、微生物の人工代謝経路の設計から、生産プロセス開発まで一貫してサービスを提供できることを強みとしている。BioJapanでは、幅広い企業との提携を通じてさまざまな分野にバイオものづくりの可能性を広げたいとしている。

合成生物学と計算科学を結びつけた微生物開発とプロセス開発

ファウンドリとは、一般には半導体産業において受託製造に特化した企業や工場のことを指す。半導体産業では、以前は自社による設計から部品製造、最終製品の生産まで垂直統合型のビジネスモデルが主流であったが、半導体製造には大規模な設備投資が必要とされるようになったため、製造のみを行うファウンドリが登場した。現在では、台湾のTaiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd. (TSMC)に代表されるファウンドリが業界全体のプラットフォームになっている。

バッカス・バイオイノベーションが目指すのは、バイオものづくり分野におけるファウンドリであり、バイオ技術を社会実装する為の要素となる機能を統合したものだ。これにより、バイオものづくりを加速化し、幅広く産業課題を解決していくプラットフォームとなることである。

バイオファウンドリの機運は海外で高まっており、積極的な投資が続いている。その背景には、ゲノムテクノロジーの急速な発展とAI・ロボット化の進歩があるだろう。

ゲノム解析は低コスト化が進み、有用物質を生産する微生物や遺伝子を探索しやすい環境となった。さらにゲノム編集技術により、目的に応じた遺伝子改変も容易になっている。

しかし、微生物の代謝経路は複雑で、どのような経路が存在するのか、どの経路で合成するのが最適なのか調べるのも一苦労だ。そこで、計算科学によるデジタルやAI技術を投入し、複雑な代謝経路を解析する。そして、どの経路が最適なのか、自動化された設備によって迅速に実験・解析し目的の有用物質を産生する微生物開発を実現するのが同社のバイオファウンドリである。

バッカス・バイオイノベーションでは、上記の一連の流れをサイクル化した開発モデルを「DBTLサイクル」とよんでいる。代謝経路設計や配列設計、酵素探索といったDesignから始まり、これに基づいて微生物の遺伝子改変等を行うBuild、自動化された実験を行なって分析するTest、その結果を計算機に学習させるLearnを通じて、次のDesignに繋げる、というものだ。

微生物株の情報が積み重なり、多様な改変微生物ライブラリーが作製されていく。合成生物学と計算科学を結びつけた画期的な仕組みと言える。

バイオファウンドリサービスの流れ 「DBTLサイクル」

バイオファウンドリサービスの流れ 「DBTLサイクル」


バイオファウンドリサービスの流れ 「Dバイオファウンドリの成り立ち(4つの要素技術の融合)BTLサイクル」

バイオファウンドリサービスの流れ
「バイオファウンドリの成り立ち(4つの要素技術の融合)DBTLサイクル」

 

幅広い分野に有用物質を提供したい

代表取締役社長の丹治幹雄氏は、「私たちのDBTLサイクルによって、技術的にはなんでもできるはずだ。その中でも、人類社会にとって価値の高い分野に注力したいと考えている」と話す。たとえば、水素酸化細菌という、水素をエネルギー源に二酸化炭素を取り込む細菌を用いて、生分解性プラスチックを生産する技術はすでに開発が始まっている。

想定される分野としては、医薬・製薬における抗体医薬品や核酸医薬品、インフラにおける水処理・汚泥に対する分解酵素探索、発酵食品における培養生産条件最適化、化学品における脱石化由来原料の生産など、多岐にわたる。また、令和4年度には腸管細菌叢モデルによる素材評価も実装する予定だ。大企業だけでなく、中小企業の技術の高度化にも貢献したいと述べる。

「当社は、『天寿を全うする直前まで健康でいられる社会を実現する』を理念とする。健康とは人類だけでなく、地球も含めてだ。デジタルとバイオをかけ合わせる時代において新しい産業を創造し、健康な社会や環境に寄与したいと考えている」(丹治氏)

各イベントでの講演においても反応は多く、企業だけでなく行政機関からも注目を集めている。企業との連携においては、社員の出向を受け入れて協働するケースもあるとのこと。

ちなみに、社名にあるバッカスとは、ローマ神話に登場するワインの神のこと。ワインという古くからのバイオテクノロジーである醸造技術に敬意を表し、バイオイノベーションを牽引するという想いに由来する。バッカス・バイオイノベーションがバイオものづくりを通じてどのような産業にイノベーションを呼び起こすのか、注目が集まる。

取材・文:GH株式会社 島田

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