【国立がん研究センター、国内外の基礎研究シーズを発掘し革新的ながん医療の実用化を目指す】

国立がん研究センター

小間番号: C-12

「社会と協働し、全ての国民に最適ながん医療を提供する」を理念に掲げる国立がん研究センター。2021年7月には各部局の専門家が横断的に集まった「橋渡し研究推進センター(CPOT)」が開設され、国内外の研究機関やバイオスタートアップの優れた基礎研究シーズを、実用化に向け臨床開発へシームレスに展開することを目指している。

今回のBioJapanでは、中央病院および東病院の先端医療科、研究所、先端医療開発センター(EPOC)、そしてCPOTにおけるTranslational Research(TR)の取り組みを主に紹介。理念にある「社会との協働」を更に推し進め、がんの治療につながるようなシーズのマッチング、および革新的な共同研究の機会創出を望んでいる。

外部シーズを発掘し、実用化まで導く橋渡し研究推進センター

国立がん研究センターは1962年にがん医療・がん研究の拠点となる国立の機関として創設以来、日本のがん医療と研究をリードしてきた。がん患者一人ひとりに最適な医療をスピーディーに提供するためには、センター内の横断的な取り組みだけでなく、アカデミアや企業など外部との協働が欠かせない。

そのような背景を受けて開設された橋渡し研究推進センターでは、アカデミアの基礎的な研究成果や、バイオスタートアップ企業の萌芽的な技術に基づくシーズを、国内外を問わず発掘する。2021年12月には、大学以外では初めて文部科学省の橋渡し研究支援機関に認定された。今後、がんの研究や治療への専門性を強みとした橋渡し研究の拠点として大きく期待されている。

がん研究や治療においては、アカデミア、企業、病院それぞれの強みを活かしたネットワークづくりが欠かせない。国立がん研究センターでは、研究所が有する基礎研究シーズの他にEPOCや両病院からも実用化を見据えたシーズが多くあり、外部とのマッチングを期待している。また、中央・東両病院にはGlobal First In Human (FIH) を含む第I相臨床試験を牽引する先端医療科があり、治験や臨床研究を行える体制が整っている。つまり、基礎研究~臨床応用、実用化に至るまで、国立がん研究センター内でシームレスに進展する環境が整っているということだ。アカデミアや企業にとっては「まずは相談するだけで、どの段階で提携できるか提案してくれる」という面は心強いだろう。その窓口となるのが橋渡し研究推進センターであり、組織横断的に円滑な支援ができるよう橋渡しの役割を担う。

実は、現在の日本のがん研究開発において課題となっているのが「ドラッグラグ」だという。これまでは製薬企業との連携によって、国内外での臨床試験スピードに大きな差はあまりなかった。ところが、海外でバイオスタートアップが台頭するようになり、First In Human(FIH)試験などの早期臨床開発が海外のみで行われることで、日本への導入が遅れてしまうという事態がすでに起きている。

国立がん研究センターでは今回のBioJapanで、がんの基礎研究や臨床試験を日本で行うフローから、その特長やメリットを示すことで、海外のバイオスタートアップ企業も含めて多くの団体に日本での開発を提案したい考えだ。

異分野との連携のためにまずは接点づくりを

BioJapan当日は、研究シーズをポスターで紹介する他,マッチングアカウントを利用した企業・アカデミアとの連携の機会創出にも力を入れる予定である。アカデミアや企業の方には、ターゲットが非常に近いものがあればぜひ声をかけてほしい。

他にも展示ブースでは,各部局の取り組みを紹介する。
まずは、前述した先端医療科の内容を紹介。ウェブサイト等でも実施中の治験(第I相試験)のリストが掲載されており、その多さに驚くかもしれない。first in humanの治験も多く、アカデミアや企業がもつシーズの実用化につながる可能性を期待させる。
また、希少がんの研究開発およびゲノム医療を推進する産学共同プロジェクトである「MASTER KEY プロジェクト」の取り組みにも注目していただきたい。

研究所からは研究概要やTR相談のフロー,そして最先端の技術を取り揃えた研究支援やバイオバンクについての説明があるため、来場者にとっては協働の形をイメージしやすいのではないだろうか。

また,バイオテッククラスターの創出を目指すEPOCの最新動向についても触れることができ、国立がん研究センターが貢献する社会医療の仕組みづくりも興味深い。

研究開発,そして革新的な医療の実現を1つの組織だけで行うことが難しくなっているのは、がん領域においても例外ではない。異分野との連携のためには、まずは接点をつくることが重要だと国立がん研究センターは考えており、今回のBioJapan出展の主目的としている。組織横断的に対応できる橋渡し研究推進センターが開設されたことで、連携したいアカデミアや企業にとってもアプローチしやすくなったといえるだろう。日本でトップクラスのがん医療・がん研究の拠点から新たながん治療が生まれるきっかけにしていただきたい。

取材・文:GH株式会社 島田

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