【クオンティニュアム、量子コンピューティングサービスで創薬応用を目指す】

クオンティニュアム

小間番号: H-24

スーパーコンピュータよりも高精度または高速に問題を解くことができると期待されている量子コンピュータ。サイバーセキュリティの堅牢化や金融商品の価格決定などに活用できるとされているが、実は創薬における活用も期待されている。

クオンティニュアムは世界最大級の量子コンピューティング企業で、米国、欧州、日本に拠点を持つ。世界で300人以上の研究者・エンジニア、450人の従業員を擁し、量子コンピュータの開発・運用のみならず、材料開発、サイバーセキュリティ、金融、組合せ最適化問題などのアプリケーション開発も行っている。

今回のhealthTECH JAPANでは、創薬分野で想定されるアプリケーションを示しながら、共同研究開発サービスと、量子計算化学のパッケージサービスを主に紹介し、創薬やヘルスケアの分野でも量子コンピュータに対する関心を高め、将来の開発に貢献したいとしている。

計算精度が飛躍的に向上する量子コンピュータ

現在のコンピュータが「0か1か」のようにどちらかの状態だけになるビットで情報を扱うのに対して、「0と1」を重ね合わせにした量子力学的な現象を用いたビットで情報を扱うのが量子コンピュータだ。少ない量子ビット数で膨大な量の計算が可能になる。

特定の領域において、量子コンピュータは古典コンピュータよりも高精度の計算ができると期待されている。創薬の分野では、複雑な分子を正確なレベルでモデル化できるようになる可能性がある。カフェインを例にとると、分子に含まれるすべての情報(電子や原子核など)を正確に表現するには2の160乗ビットが必要になる。これは、地球上の全原子の1〜10%に相当する膨大な情報量であるため、ビット数を減らすなどして精度を下げざるを得ない。しかし、量子コンピュータであれば、わずか160ビットで正確なカフェイン分子モデルを構築できる。創薬の分野では、これまで標的タンパク質とリガンドの結合エネルギー計算の高精度化に向けた将来的な可能性について共同研究が行われている。

量子コンピュータは開発中の技術ではあるものの、現在の技術レベルでも分子計算などテーマによっては創薬に活用できる可能性はある。今後、量子コンピュータが普及し始める時期に導入検討に移るのではなく、今の時点から共同研究という形で量子コンピュータを使ってみることで、将来的な研究開発やビジネス活用においてリードできるだろう、というのがクオンティニュアムの見方だ。

量子コンピュータをフルスタックで提供

クオンティニュアムが特長としているのは、ハードウェアからミドルウェア、アルゴリズム開発、アプリケーションまで、フルスタックの量子コンピューティングサービスを提供していることである。量子コンピュータを扱うには、どのハードウェアを選択するか、どういったアルゴリズムを開発すれば良いのか、など確認するべきプロセスが多く、実際に取り扱う際の難易度も高い。クオンティニュアムはこれらを一手に引き受けることが出来る。

また、ハードウェアに依存せずに量子プログラミングを可能にするソフトウェア開発キット「TKET(ティケット)」を提供。オープンソースとして利用できること、幅広いゲート型量子デバイスに対応していることを特長として、量子回路の最適化(コンパクト化)や実機を使った計算時に生じるエラー補正などの機能を有している。

なお、量子コンピュータに関しては、組み合わせ最適化問題などに特化したアニーリング型の研究開発も盛んに行われているが、クオンティニュアムは汎用的な計算が可能なゲート型量子コンピュータに特化しており、技術が発展するにつれて多様な応用例の対応が期待できる。

創薬における量子コンピュータの可能性

healthTECH JAPANでは、量子計算化学や量子機械学習をテーマとする共同研究開発サービスと、量子計算化学パッケージであるInQuanto(インクァント)を主に紹介する。

共同研究開発サービスは、クオンティニュアムと顧客企業とでプロジェクトチームを組成し、将来の優位性を見越しながら、顧客の事業の中で量子コンピュータを活用できる場所を選定してアルゴリズム等に関する共同研究を行うというものだ。

InQuantoは、現在の量子コンピュータの技術をもとに開発された量子計算化学プラットフォームで、ユーザーによるカスタマイズも可能になり、分子モデルの高精度化に貢献できる。

量子コンピュータといえば暗号解読などセキュリティ分野で取り上げられることが多いが、実は創薬やヘルスケアの領域でも活用される可能性を秘めている。クオンティニュアムは、まずはコンサルティングや勉強会・トレーニングのようなところからはじめ、量子コンピュータの存在や応用例を理解いただいたうえで、顧客に応じた提案をしたいとしている。

取材・文:GH株式会社 島田

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