【テックドクター、ウェアラブルデバイスからデジタルバイオマーカー探索を支援】

テックドクター

小間番号: H-25

スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスの普及により、活動量や心拍を24時間測定し、データとして解析するハードルは下がってきている。

ウェアラブルデバイスにより取得したデータをもとに高ストレス者を推定するアルゴリズムが慶應義塾大学医学部で開発され、2019年に設立されたのがテックドクター。「データで“調子”をよくする時代へ」をビジョンに掲げ、医療業界とヘルスケア産業をテクノロジーでサポートすることを目指している。

今回のhealthTECH JAPANでは、デジタルバイオマーカー探索を支援する運用・解析基盤である「SelfBase」を中心にサービスを紹介する。

クラウドでデータ収集から解析まで行うSelfBase

テックドクターが取得するストレス値は、心拍数と心拍間隔から算出されるCVRR(Coefficient of variation of R -R interval)と呼ばれる、自律神経全体の活動度である。CVRRそのものは国内で最も汎用される指標だが、テックドクターではウェアラブルデバイスで取得した脈拍数からノイズを除去、データを整形したうえでCVRRを算出する。一般に、CVRR値の増加は副交感神経の活動増加を示すと考えられており、うつ病患者や自律神経活動失調者、大きなストレス負荷のある人にはCVRRが小さくなる傾向がある。

その他にも、CVRR単独で評価するだけでなく、ウェアラブルデバイスに搭載されている加速度センサーから睡眠ステージを推定し、より正確に精神疾患の指標を構築することも可能(特許申請済)だという。たとえば、1日平均ではCVRRに大きな差はないが、深い睡眠時では健常者と有病者の間で統計的な有意差を見いだす、ということもできる。

こうしたデータ処理や解析を行うプラットフォームが「SelfBase」である。SelfBaseでは、ウェアラブルデバイスやその他のヘルスケア関連サービス、健診データなどからデジタル・アナログデータを取得・蓄積し、解析する。ダッシュボードではリアルタイムにデータの取得状況の確認や管理ができる。また、クラウド上で相関分析や群間比較を実施し、解析時間の短縮にも貢献可能だ。

また製薬企業や医療機関においては、デジタルバイオマーカーの探索に活用することができるという。疾患の発症や発作のタイミングをデジタルデータから予測したり、発症後の病性を判定するときに有用になる。デジタルバイオマーカーをもとにした「データ診療」の加速や、将来的には疾患の治療や予防を行うデジタルセラピューティクス(DTx)のサポートも期待される。テックドクターはすでに複数の製薬企業や研究機関と連携、デジタルバイオマーカーの探索に取り組んでおり、疾患の定義づけや意味づけは得意な領域であると、自信を見せる。精神疾患患者での解析を得意としているが、循環器疾患やがん領域などにおける痛みや不調の予測にも活用できる可能性がある。

また、デジタルバイオマーカーの探索だけでなく、分散型臨床試験(DTC)とよばれるオンライン治験への活用も見据えると24時間日常生活の中で装着するウェアラブルデバイスだからこそ実現可能なデータ解析の支援も期待される。

機能性成分の検証やメンタルヘルスのマネジメントにも

心拍数や活動量を測定する医療機器は多くあるが、ウェアラブルデバイスを使用するメリットとして、導入時のコストや日常的に装着できる気軽さなどが挙げられる。また、数週間や数ヶ月、あるいは数年というロングタームにわたるデータ収集も、ウェアラブルデバイスなら容易である。ロングタームデータは膨大な容量になるが、SelfBaseではクラウドで管理するため、データ管理や解析も比較的容易という点も大きなメリットだ。

また、疾患の研究以外の活用として食品メーカーにおいては、機能性成分を配合した食品を摂取したときの睡眠中のストレスを測定するという用途にも応用が考えられ、実際に複数の企業と話が進んでいるという。
ストレスは一朝一夕で緩和するものではないため、ウェアラブルデバイスによる24時間のロングターム計測によって、今後一般企業における従業員のストレス測定など、詳細なデータ解析を用いることでメンタルヘルスのマネジメントにも活用の可能性が広がっている。

代表取締役の湊和修氏は、IT企業に勤めていた当時、自身の親が大病を患い、その姿を目の当たりにして「データを活用して医療に貢献できないか」と考え、退社して慶應義塾大学の精神科に研究員として入局。2年後にテックドクターを起業した。データを活用して医療業界やヘルスケア業界を変えることができるのか、注目される。

取材・文:GH株式会社 島田

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