【中外製薬】デジタルと人間が協働する医薬品製造工場における「スマートファクトリー」構想を提示

中外製薬

小間番号: D-51

中外製薬は2030年を見据え、「デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターになる」ことを目指す「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を掲げている。CHUGAI DIGITAL VISION 2030の基本戦略の一つに「すべてのバリューチェーン効率化」があり、デジタルと人間の協働の場として、医薬品製造工場における「スマートファクトリー」構想がある。今回のBioJapanでは、中外製薬の強みである抗体技術だけでなく、将来の業界標準になり得るスマートファクトリー構想も紹介する。スマートとは「デジタルで得られるインサイトを賢く統合する」ことであり、中外製薬では、「データをもとに未来を予測し、ヒト、モノ、カネ、情報の流れが滞りなく流れるようにすること、それを医薬品製造規制(GMP)に合致した上で実装した医薬品製造工場をスマートファクトリー」と考えている。

強みである抗体技術と新しい創薬技術を紹介

中外製薬といえば抗体技術に大きな強みを持つことでも知られている。自社開発品には抗IL-6モノクローナル抗体「アクテムラ®/ロアクテムラ®、一般名:トシリズマブ」、ALK阻害剤「アレセンサ®、一般名:アレクチニブ」、抗FlXa/FX二重特異性抗体「ヘムリブラ®、一般名:エミシズマブ」などがあり、いずれも世界各国で承認されている。企業との連携にも積極的に取り組んでおり、がん、眼科、神経内科、自己免疫疾患、心腎血管代謝疾患において、臨床段階でのライセンス機会を求めている。また、新たな創薬技術として中分子創薬プラットフォームについても紹介している。

今回のBioJapanのブースはこれまでのデザインを刷新、洗練されているという意味でのスマートさも醸し出す。毎年恒例となっている、バリスタによるコーヒーの提供もあり、スマートファクトリーという未来を垣間見る場所にしていただきたい。

医薬品製造工場におけるスマートファクトリー構想のフラッグシップとしての次世代の注射剤製造ライン

次世代の注射剤製造ラインのコンセプトとして中外製薬工業は「人が介在しない」、「時間的制約のない」、「フルマルチフィル」の3つを挙げる。

「人が介在しない」とは、省人化の究極のかたちである。他の産業ではロボットの導入が進んでいるとはいえ、医薬品の製造において、グローバルGMP要件を満たし無人化を目指したラインはまだ少ない。スマートファクトリーでは最先端のロボティクスを取り入れ、2つ目の特徴である「時間的制約のない」と合わせて、将来的には無人の24時間生産体制を目指している。

3つ目の「フルマルチフィル」とは、患者によって投与形態(点滴や静脈注射、或いは皮下注射)や投与量が変わる薬剤について、その投与方法にあった剤型(バイアルやシリンジ)のハンドリングを可能とするとともに必要充填量を自動で調整し、同一薬剤を様々な形態に充填・製造するというものだ。これによりパーソナライズド・ヘルスケア(PHC)に対応するもので、これも人が介在することなくロボティクスとデジタルを活用することでオンデマンド製造することを目標としている。

今後、ロボットのアタッチメントを複数用意し、製造設備をモジュール化することで、製品に合わせてフレキシブルに短時間で製造ラインを変更でき、多種多様な製品に対応できるという。

次世代注射剤製造ラインの実現に向けたパートナーとの出会いに期待

次世代の注射剤製造ラインの特徴はハードウェアだけでなく、先進的なデジタル化にもある。24時間連続稼働を実現するための要素技術の一つとして予知保全が挙げられる。 次世代の注射剤製造ラインには多くのセンサーを取り付けリアルタイムでデータを取得し、それらデータを分析することで自動的に軽微な異常をも検知し、生産を止めることなく対応する予知保全の実現を目指している。

さらに、生成AIの活用も検討しているという。生産の進捗状況や製造ラインのコンディションを問いかけると、いつ生産が終了するか、過去のデータと比べてラインの稼働状況に変化がないか、通常と異なるデータを検知してメンテナンスの必要な箇所を示したりすることができるようになるとさらに期待は膨らむ。

ただし、こうした医薬品製造工場におけるスマートファクトリー構想を実現するためには、中外製薬工業単独では難しいことも事実である。中外製薬工業執行役員デジタルエンジニアリング部長の倉林昭氏は、「自動化を進めていく中で、必ずしもすべてのソリューションを私たちがもっているわけではない。今回のBioJapanでは、パートナリングを通じてさまざまなテクノロジーやソリューションを提供いただけるような企業と出会えることを期待している」と話す。

倉林氏は、「Make Japan as Number One Again - 私たちの医薬品製造工場におけるスマートファクトリー構想を踏まえて開発する製造ラインが業界のスタンダードとなり、日本の医薬品製造業全体の発展に貢献できればと考えている」と、他の製薬企業やCMOに未来の無菌注射剤製造ラインのビジョンを示したいとしている。

ブース

【企業・団体名】中外製薬
【URL】https://www.chugai-pharm.co.jp
【展示会】BioJapan
【小間番号】D-51
【主な展示】スマートファクトリー、
中外抗体技術の紹介、新たな創薬技術、
CHUGAI DIGITAL、PHCソリューション、
Chugai Ventures他

取材・文:GH株式会社 島田

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