小間番号: B-62
細胞間シグナル伝達方式として近年注目を集めているのがエクソソームだ。基礎研究でエクソソームの性質が研究されているだけでなく、腫瘍マーカーや治療薬への応用も期待されている。エクソソームなどの細胞外小胞をイムノクロマト法で検出する特許を所有するのがTOPPANであり、その特許を使用して世界初の細胞外小胞用イムノクロマトキットが大日本塗料から販売されている。
TOPPANは120年以上の歴史をもち、創立当時は凸版印刷という社名にあるように印刷事業をメインとしていた。現在は印刷技術を応用したデジタル画像処理やエレクトロニクス分野にも注力しており、印刷にこだわらない事業を多角的に展開している。その象徴として、2023年10月に社名から印刷を外した持株会社TOPPANホールディングスを設立。傘下の一つにあるのが、今回BioJapanに出展するTOPPANだ。
TOPPANが掲げる成長領域である「健康・ライフサイエンス」の1つとして「体外用診断薬」分野などがあり、細胞培養や診断技術の研究開発を長く続けている。その中で生まれたのが、細胞外小胞をイムノクロマト法で検出する特許の取得である。
細胞外小胞とは、細胞から分泌される直径100ナノメートル前後の小胞体である。特に、エクソソームとよばれるものは内部に核酸やタンパク質などが存在することが2007年に報告され、新たな細胞間シグナル伝達方式として注目されるようになった。また、がん細胞から分泌されるエクソソームにはがん細胞特有の成分が含まれていると考えられており、腫瘍マーカーとして活用できるのではないかと期待されている。細胞培養で得られたエクソソームを体内に投与して疾患治療に応用できる可能性もある。
エクソソームなどの細胞外小胞を簡易的に検出するキットを発売したのが大日本塗料だ。大日本塗料では妊娠検査やインフルエンザ検査などで使われるイムノクロマト法で金ナノ粒子や銀ナノ粒子が使われていることに注目。塗料開発の中で保有する分散技術を活用し、貴金属のナノ粒子化技術を確立して、腫瘍マーカーとして期待されているエクソソームの検出へ展開した。その中で、TOPPANが所有するエクソソーム検出の特許のライセンス供与を受けて完成したのが世界初の細胞外小胞用イムノクロマトキット「Exorapid-qIC®」だ。
Exorapid-qIC®は専用の装置を必要とせず、およそ45分で検出できる簡便さが大きな特長。細胞小胞体の表面に発現するCD9、CD63、CD81タンパク質をもとに評価する。ただ、エクソソーム研究は新しい研究分野であり、日進月歩で研究が進んでいるため、当日の展示ブースではキットの紹介だけでなくエクソソーム研究の情報交換も行いたいとのことだ。
Exorapid-qIC®は2023年に発売され、スマートフォンやスキャナで簡単に実験結果を画像として取り込むことができることから多くの問い合わせが来ているという。その一方で、撮影環境によっては定量化が難しいという課題が、販売後のユーザーの反響から見えてきた。
そこでTOPPANは、得意とするカラーマネジメント技術を用いて、ユーザーが簡単にイムノクロマト法による検出量を数値化・定量化できるソフトウェアの開発に取り組んでいる。台紙に専用カラーチャートを設けた台紙とともに試験紙を撮影することで、撮影時の明るさやホワイトバランスを補正するカラーマネジメント処理を行い、イムノクロマト法での検出結果の定量化が可能になるという。BioJapan当日もソフトウェアの概要を紹介する。
TOPPANでは医薬・ヘルスケア業界向けに充填・包装受託サービスも提供している。資材の手配・生産から試薬調整・手動または自動分注・充填、さらに組立・包装・発送作業などを担う。埼玉県にある幸手工場と、グループ会社であるトッパンメディカルファクトリーでは体外診断用医薬品製造業登録をし、高品質でクリーンな生産環境のもとで体外診断用医薬品の製造を行っている。要望に合わせて、工程や資材を個別に手配できるとのことだ。
なお、会期3日目の10月11日にはランチョンセミナーを開催。製品・サービスの紹介だけでなく、エクソソーム研究者によるエクソソーム研究の最新トレンドの講演も予定している。
【企業・団体名】TOPPAN株式会社
【URL】https://www.toppan.com/ja/
【展示会】BioJapan
【小間番号】B-62
【主な展示】細胞外小胞用イムノクロマトキット、画像解析技術によるイムノクロマト定量ソフトウェア、体外診断用医薬品の製造受託サービス
【ランチョンセミナー】10月11日 11:30-12:30 F202「ラテラルフローアッセイに新たな価値を」
取材・文:GH株式会社 島田
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