【産業技術総合研究所】新設されたバイオものづくり研究棟で産学連携のイノベーションを促す

小間番号: PTR-9 / D-102

国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)は2025年8月、微生物や植物によるバイオものづくり研究のためのプラットフォームとして新たに「バイオものづくり研究棟」をつくばセンターに開所した。企業向けに交流の場となるオープンコミュニケーションスペースやラボスペースも提供しており、さらなる産学連携を促進しながらバイオものづくりにおけるイノベーション創出を目指している。

企業も入居できるバイオものづくり研究棟が開所

産総研の生命工学領域ではバイオものづくり、医療・ヘルスケア、資源循環を重要分野として位置付け、高齢化社会の社会課題解決やバイオエコノミー社会の実現に向けた最先端の研究開発を推進している。

今回、新たに開所したバイオものづくり研究棟には、微生物の培養・分析・評価機器を集約した共用ラボが設置されており、他分野との連携も促しながら研究成果の迅速な検証が可能になったという。

さらに、産総研の研究者と共同研究を行う企業に向けては占有スペースの貸し出しも行っており、産総研が所有する機器を利用できるだけでなく、専門性の高いアドバイスを受けることができる。産総研職員が構想段階から実証までサポートするメンターの役割を担っている。

スタートアップ企業のように自社の設備が十分でない場合、高速液体クロマトグラフィ質量分析装置や自動培養システムなどの高額な機器を利用できるのは大きなメリットといえるだろう。バイオものづくりでは微生物の遺伝子改変を行うこともあるが、遺伝子組換え実験専用スペースや設備もあり、必要に応じて安全委員会による承認手続きまでも可能だという。

また、オープンスペースでのコミュニケーションもバイオものづくり研究棟の狙いの一つであり、多様な研究者と企業が交わることで新たな発想が生まれ、イノベーション創出のきっかけとなることに期待が寄せられている。

また量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)とも連携し、量子コンピューティングや人工知能(AI)を活用した次世代ものづくりにも取り組むという。例えば、AIを活用して有用物質を大量に生産する微生物株の早期検出や、ハイスループットスクリーニングなどを想定している。

国内最大規模のバイオものづくりプラットフォームへ

バイオものづくり研究棟の開所に先立ち、2025年4月には微生物や植物を利用するバイオものづくり研究を集約化した新たな拠点「バイオものづくり研究センター」を設置した。当センターは生物プロセス研究部門が前身となっており、バイオものづくり研究の立場や役割をより明確化して早期の社会実装を目指す。

バイオものづくり研究センターは、北海道とつくばを主な活動拠点としている。北海道センターには完全密閉型の人工環境下でゲノム編集/遺伝子組換え植物の栽培を行える植物工場施設や国内有数の処理能力を持つクラスターマシンなど、つくばセンターには上記バイオものづくり研究棟に加え微生物探索拠点も備えており、農産物の生育促進技術や有用物質を生産する植物や微生物の探索、開発、廃水処理技術に至るまでの研究開発を行っている。

さらに産総研の生命工学領域で取り組んでいる具体的な関連研究テーマには、ミドリムシ由来の生分解性プラスチックやバイオ接着剤、大阪・関西万博で展示されている培養肉などがある。

得意とする微生物資源の探索・活用技術や微生物構築技術を核として国内最大規模のバイオものづくりプラットフォームを構築し、新設されたバイオものづくり研究棟を含めてバイオエコノミー社会に向けた技術インフラの実現を目指す。

BioJapanは社会変革を加速させる第一歩

BioJapanの展示ブースでは、産総研が持つ最新技術シーズ、開所したバイオものづくり研究棟を含めた施設、社会実装につながった産学連携の成果を紹介する。10月8日(水)のスポンサーセミナーでは「AIと量子コンピューティングが拓く生命工学のパラダイムシフト」と題し、量子技術とバイオテクノロジーへの展望、バイオものづくりや次世代創薬に向けた先端的な取り組みが紹介される。

産総研生命工学領域長の千葉靖典氏は、「生命工学は、持続可能な未来を築くための鍵です。私たちは皆様との連携を通じ、新たな価値を生み出し、社会変革を加速させていきます。BioJapan 2025が、その第一歩となることを強く願っております」と呼びかける。

【企業・団体名】国立研究開発法人産業技術総合研究所
【URL】https://unit.aist.go.jp/dlsbt/bio/index.html
【展示会】BioJapan
【小間番号】PTR-9 / D-102
【主な展示】バイオものづくり、ヘルスケア、再生医療、バイオ計測・診断、医療機器などに関わる最新技術シーズ、研究施設、産学連携の成果の紹介
【スポンサーセミナー】10月8日(水)14:30 ~ 15:30 F206「AIと量子コンピューティングが拓く生命工学のパラダイムシフト」

取材・文:GH株式会社 島田

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