小間番号: D-8
2018年に製薬企業発サイエンスパークとして誕生した湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)。2025年9月現在、約190の企業・団体が集積、そして入居者は2,500名を超え、製薬企業のみならず次世代医療、細胞、農業、AI、行政など、幅広い業種や規模の産官学が結集してヘルスイノベーションを加速する場となった。「世界に開かれたライフサイエンスエコシステムの構築」というミッションのもと、新たにGMP/GCTP(医薬品製造管理基準/細胞加工管理基準)に準拠した「賃貸型細胞培養加工施設」を設け、2025年11月の稼働開始を予定している。
細胞医薬品の開発は主に、前臨床研究、プロセス開発、臨床試験というステップを踏む。このステップにおいて、多くの場合に課題となるのがフェーズI / II、初期の臨床試験で投与するための治験薬の製造である。
細胞を投与する細胞医薬品の臨床試験では、GMP/GCTPに準拠した細胞培養加工施設(CPC)で細胞医薬品を製造する必要があるが、スタートアップなどの企業や医師主導治験の場合、自社でCPCを設けて実施するには高額な費用と専門性の高い人材の雇用が求められる。一般的な薬剤では医薬品開発製造受託機関(CDMO)に委託することが多いが、細胞医薬品に関しては製造プロセスの技術移管において数億円の費用と1年以上の時間がかかり、スピード感を失うことになる。スタートアップ企業においては、このような費用と時間は過大な負担となってしまう。
そこで今回、湘南アイパークが新たなサービスとして手がけるのが賃貸型CPCである。Grade C / B / Aエリアを備えたクリーンルームユニットを2部屋用意し、共有機器も完備されている。要望に応じて、製造部門の責任者や品質部門の試験管理者などの業務を委託することも可能だ。
湘南アイパークの入居企業にとって、前臨床研究とプロセス開発を行っている研究者が時差なく、サイトチェンジせずそのままCPCを利用できるのが大きなメリットといえる。入居企業のみならず、海外も含めて外部企業も利用可能である。特にスタートアップ企業にとっては、初期の治験に向けた細胞医薬品の製造のハードルを下げるものであり、細胞医薬品・再生医療等製品に取り組む企業の製造戦略において新しい選択肢となるものだろう。
湘南アイパークには研究棟が5棟あり、それらを連結させている430メートルにわたる廊下はオープンイノベーションの象徴ともなっている。今後、企業や研究機関の集積ニーズや賃貸ラボのニーズが高まることが予想されることから、このたび6棟目の新設が決定した。竣工は2028年度冬ごろを予定しており、「一つ屋根の下」というコンセプトに沿ってさらなる研究開発機能の強化、スタートアップ支援、共創スペースの拡充を狙う。
湘南アイパークへの参画方法には、ラボやオフィスなど物理的な拠点を置くテナント入居と、物理的な拠点を置かずにイベントやマッチングサービスといったコミュニティアクセスに特化したメンバーシップの2つの方法がある。このうち、メンバーシップについては新しいプランが用意されることになった。
現在はプレミアムプランとレギュラープランの2プランがある。このうちプレミアムプランは製薬企業向けとサービスプロバイダ向け、それぞれのニーズに合わせた新サービスを提供する。一方、レギュラープランは価格を抑えて最低限のサービスの提供とするパートナープランに内容を変更し、必要に応じてオプションを追加することで個々のニーズを満たす形式とした。レギュラープランは大幅な価格引き下げとなっており、関心をもつ企業はかなり増えそうだ。
厚生労働省による令和7年度の医薬品安定供給支援補助金(創薬クラスターキャンパス整備事業)に、湘南アイパークの5事業が採択されたことも発表された。この支援事業は政府の重要施策である日本の創薬力向上に向けた取り組みの一環である創薬エコシステムの構築を目的としたものであり、今回の採択を受けて湘南アイパークは、より早期の研究ステージのスタートアップ企業やアカデミアへの門戸を開き、企業との協業や世界の投資家との連携を促進させるサービスや環境を提供するとしている。
さらに、神戸医療産業都市にて賃貸ラボ型の研究開発施設「アイパーク神戸(仮称)」の開所も決定した。神戸新交通ポートライナーの計算科学センター駅と連絡デッキで直結する予定であり、アクセスの良さから関西に拠点を置く企業を中心に新たな研究開発拠点の選択肢になることが見込まれる。
今回のBioJapanでの展示ブースは過去最大の面積となり、ブース周辺には入居企業のブースが集まるなど、共創によるイノベーションを彷彿させる空間が作られる予定だ。
【企業・団体名】湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)
【URL】https://www.shonan-ipark.com/
【展示会】BioJapan
【小間番号】D-8
【主な展示】賃貸型細胞培養加工施設を含めた施設やコミュニティ機能の紹介
【スポンサーセミナー】
10月8日(水)13:00 ~ 14:00 F205「細胞医薬品の製造の加速に向けて:前臨床研究から初期の製造に向けた戦略」
10月9日(木)14:30 ~ 15:30 F201「創薬拠点クロストーク:10年後の日本の創薬エコシステムの未来」