【クォンタムフラワーズ&フーズ】世界初の中性子線育種で新系統創出を加速

小間番号: C-06

中性子線による育種は従来の放射線育種よりも変異発生率が高く、新系統創出までの時間が短いとされている。この中性子線による育種を商用サービスとして世界で初めて展開したのがクォンタムフラワーズ&フーズである。BioJapanでは、バイオエネルギーやバイオものづくり分野における微生物の性能向上の事例や、医薬品開発への応用可能性について紹介する。

新系統創出は植物で最短1年、微生物は1週間

クォンタムフラワーズ&フーズ(以下、QFF)は、日本の加速器の約7割が集まる茨城県にて設立されたスタートアップだ。QFFは、量子線物理学とバイオテクノロジーを高度に融合させ、世界で初めて商用の中性子線による育種サービスの社会実装に成功した。

中性子による育種研究の歴史は長く、例えばグレープフルーツの品種の一つ「スタールビー」は、1960年代にアメリカでの原子炉による中性子線変異実験によって生まれたものだ。ただし、中性子線へのアクセスが難しいことなどから、商用的には用いられていなかった。

DNA変異を起こさせるほどの高エネルギー中性子線を効果的に照射できる施設は海外を含めても数カ所しかない。アカデミアや企業と連携し、中性子線による生物資源の受託開発サービスを商用提供しているのがQFFである。

中性子線は高いエネルギー付与によってDNAに複雑な損傷を誘発し、欠失や構造変化を含む多様な変異を生じさせることができる。こうした特性から、従来の放射線や化学変異剤とは異なる変異スペクトラムが期待できる。

QFFの宇留野秀一CSOは、「既に多くの品種が産み出されているガンマ線に比べても、中性子線による変異発生率は約300倍にもなった例があります。中性子線は一度に大量のサンプルに照射できることも特長です」と述べ、多様な変異系統が得られることを中性子線育種のメリットに挙げている。この変異誘発力により、新系統を創出するまで植物なら最短1年、微生物であれば最短1週間〜2ヶ月と、従来期間の1/6〜1/3程度という時間短縮を可能にしている。

エネルギー、バイオものづくり、医薬品への応用

中性子線育種技術は、理論上はDNAをもつあらゆる生物に適用可能であり、QFFはバイオ分野では主に微生物・動植物細胞による有用物質生産、バイオエネルギー、バイオものづくり、医薬品などの領域において技術の適用を進めている。

エネルギー分野では、バイオ燃料の生産効率向上を目指し、藻類やメタン菌改良が行われている。バイオものづくり分野においても、有用物質の生産プロセスにおけるボトルネックを解消するアプローチが得意だという。

遺伝子改変技術では近年、ゲノム編集が注目されているが、ゲノム編集は標的遺伝子を狙って改変できる強力な技術である一方、発酵生産性や環境耐性など、多数の遺伝子や代謝経路が関与する複雑な形質では、標的遺伝子をあらかじめ特定することが難しいケースもある。中性子線によるランダム変異は、こうした複雑形質の改良や未知の有用形質の探索に適しており、ゲノム編集と相補的に活用することも可能だ。

一方、中性子線育種では、多様な変異を持つ菌株群を創出し、その中から生産性や環境耐性など目的とする形質を持つ株を選抜することで、実生産に適した菌株開発につなげることができる。実際、酵母の事例では、わずか2ヶ月の育種期間で目的の二次代謝産物の生産量が親株の1.6倍以上となる高生産株の獲得を実現している。

さらに、医薬品分野への応用可能性も探られている。抗体医薬品製造用のCHO細胞などの培養細胞へ中性子線を照射することで、抗体生産性の向上などへの応用可能性を検討している。

あるいは、放線菌の中性子線育種によって新規抗生物質の探索や、ウイルスベクターや腫瘍溶解性ウイルスを改良できる可能性もある。

なお、社会実装において、中性子線育種は外来遺伝子を導入しないため、遺伝子組換え規制の対象外となる。社会実装までの時間やコストを大幅に短縮できることも中性子線育種の強みである。

※国・地域により取扱いに違いがある可能性があります。

茨城県事業に採択された自社事業も紹介

QFFでは、中性子線照射のみを行うプランから、照射後の選抜・育種までを一貫して担う品種開発サービスまで、顧客のニーズに合わせた柔軟な受託メニューを用意している。ゲノム編集やEMS(化学変異剤)処理を組み合わせることで、より効率的な開発も可能とのこと。

また、こうした技術を自社事業として発展させるため、茨城県「令和8年度 戦略分野新製品開発促進事業」に採択された「メタン発酵効率化プロジェクト」にも注目したい。これは、中性子線育種によるメタン発酵関連微生物の改良と、AIを活用した発酵状態のモデリング・監視技術を組み合わせ、未利用バイオマスからのメタン生産効率向上を目指すものである。

BioJapanのQFFブースでは、これら先進的な実証事例の紹介に加え、多様な微生物の改良課題に関する相談を広く受け付けている。特に医薬品分野について宇留野CSOは、「応用可能性のPoCを共に取り組んでいただけるような関係がBioJapanで生まれればいいと考えています」と呼びかけている。

【企業・団体名】クォンタムフラワーズ&フーズ
【URL】https://qff.jp/
【展示会】BioJapan
【小間番号】C-06

取材・文:GH株式会社 島田

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