【タイガー魔法瓶】100年培った真空断熱技術で挑むコンパクト細胞輸送

小間番号: R-47

炊飯器やステンレスボトルなどで有名なタイガー魔法瓶が再生医療JAPANに出展する。同社は、魔法瓶製造で培った真空断熱技術を応用し、再生医療における細胞輸送容器を水筒サイズで実現した「真空断熱セルポッド」を開発。封入や輸送におけるスタッフの負担を軽減し、細胞輸送にかかる時間やコストの削減につながると期待されている。

水筒サイズの細胞輸送容器「真空断熱セルポッド」

再生医療が広く普及するためには、細胞の品質を維持したまま安全に運ぶ高度なロジスティクスが欠かせない。従来の細胞輸送で使われる断熱輸送箱はサイズが大きい上に重く、移動手段が専用車両に限定されるなど、医療現場や配送に携わるスタッフに大きな負荷を強いていた。さらに、複数の検体を1つの容器に混載する運用では、他検体の出し入れに伴う温度変動や、検体の取り違いリスクも懸念されている。

こうした課題を解決すべく、タイガー魔法瓶は再生医療のプラットフォーム構築を進めるGaudi Clinical社と共同で、小型の医療検体輸送容器「真空断熱セルポッド」を開発した。2026年4月から実証実験としてテスト運用を開始しており、2027年の実用化を目指している。

真空断熱セルポッドの特長は、750mLの容量を確保しながら、サイズが縦約18cm、直径約10cm、重量約0.7kgとコンパクト・軽量化された点にある。見た目は、やや大きめの水筒に近く、持ち運びしやすいように専用のポーチも付属している。手軽なハンドキャリーや公共交通機関での携行が可能となり、専用車両の輸送で懸念される都市部の渋滞を回避した確実な定時配送を実現する。担当者は、「いかにコンパクトに仕上げるかというところに苦労しました」と話すように、従来の断熱輸送箱とは一線を画すサイズとなっている。

厳格な温度管理と無線通信によるトレーサビリティも強みとしている。潜熱蓄熱材の使用により、20℃帯を24時間、5℃帯を12時間、維持できるという。さらに、フタの内部に温度ロガーが内蔵されており、Bluetooth経由でスマートフォンからクラウドへ温度データをリアルタイムに転送するシステムを確立した。万が一の温度逸脱時にはアラートが発報され、輸送スタッフが手元で確認できるだけでなく、本部にデータが集約されるため、位置情報と連動した集中管理が可能だ。

実際の医療現場における「採取」「用時調製」「納品」の3フェーズに注目した実証実験でも、スタッフの作業負担が劇的に軽減されたことや、配送員1名が複数のセルポッドを所持して複数箇所へ一度に納品する「マルチドロップ」の有用性が検証された。セルポッドは、再生医療における細胞輸送の課題を劇的に改善する可能性を秘めており、8月に発表した際にはさまざまなメディアで取り上げられたほど注目されている。

真空断熱技術をいち早く産業用途に応用した強み

セルポッドの開発に至った背景には、タイガー魔法瓶が誇る真空断熱技術の100年以上の積み重ねにある。真空断熱とは、真空を作ることによって熱の伝導と対流を抑制し、金属箔によって輻射熱を反射させて熱を閉じ込めることだ。

真空断熱は水筒やポットなど日用品に使われているが、この技術をいち早く産業用へと展開したのがタイガー魔法瓶の現在の強みとなっている。約20年前、自動車のエンジンルームに搭載されるエンジン冷却水用蓄熱システムを開発し、過酷な環境に耐えうる産業用機器の設計・開発・生産体制を構築した。

さらにチャレンジしようと社内の気運が高まっていた中で、約10年前に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、実験試料を国際宇宙ステーション(ISS)と地球で往復輸送を行うための容器開発プロジェクトがスタート。独自の真空二重断熱容器を開発し、往復輸送中におけるタンパク質サンプルの20℃±2℃での12日間以上の温度維持を達成した。ここで培われた高度な熱制御技術と高い信頼性こそが、今回の医療用「真空断熱セルポッド」の礎となっている。

他にも、同社の熱制御テクノロジーは医療現場そのものの課題解決にも広がっている。その一例が、内視鏡手術やロボット手術で使用するスコープ(カメラ)を加温・洗浄する「真空断熱スコープクリア」だ。温めた生理食塩水を入れ、術中にスコープの加温と洗浄を行うこの容器は、高い保温性能と手術台での安定性を備える。すでに国内外の医療機関にて41症例を実施しており、2027年中の一般販売を目指しているという。

再生医療JAPANで要望を受ける場に

再生医療JAPAN当日では、セルポッドの実物が展示される。担当者は、「製品を知っていただきたいのはもちろんですが、細胞以外にも血液、尿、検査試薬などの様々な医療検体の輸送ニーズもあるかと思います。さまざまな医療検体や医療輸送の関係者とディスカッションして、今後の製品のブラッシュアップやサービス開発につなげたいと思います」と述べ、医療分野へのさらなる貢献を目指している。100年以上の歴史をもつメーカーだからこその技術力に注目したい。

【企業・団体名】タイガー魔法瓶
【URL】https://www.tiger-corporation.com/ja/jpn/for-business/
【展示会】再生医療JAPAN
【小間番号】R-47

取材・文:GH株式会社 島田

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